マイクロ波回路
受動回路
 マイクロ波受動回路 の主要課題は、Sパラメータのところで詳しく述べるように、インピーダンス整合です。 従って、マイクロ波回路の特徴は、「反射波に配慮した分布定数素子 で構成される回路」であるとも言えます。
  つまりマイクロ波のように 回路長がその波長に較べて無視出来ないような大きさになると、回路の不連続接続点からのマイクロ波の「反射」が、 回路特性に「思わぬ影響」を及ぼうことがあるので、それに対する「配慮」をする必要がある回路といえます。
  分布定数回路以外の特徴的なマイクロ受動回路には下記のようなものがあります。 参考サイト
 
(1) 非可逆回路 最も特徴的なマイクロ波回路は、アイソレータや サーキュレータなどの 非可逆回路です。
磁性体がマイクロ波で磁気共鳴し、かつその磁気特性の異方的振る舞いにより波の偏波面が変わる性質を使い、 進行波と反射波の伝搬特性を変え、伝送方向の一方向化や回転を行うものです。
 利用する立場からは、進行波と反射波を振り分け出来る回路と理解しておけばよいでしょう。
 
(2) μ波フィルタ マイクロ波は、帯域の広い周波数ですから、幾つかに分割して利用することが出来ます。 その際利用されるのがマイクロ波フィルタです。
  これらのフィルタは導波管や同軸線路のような低損失の伝送線路をフィルタ素子として構成されます。しかし 導体回路に電磁波を閉じ込める回路は、マイクロ波が導体表面しか流れない性質(表皮効果)を持つこともあって、 特に小型のものは導体損が大きくなる傾向があります。

  近年、低損失で高誘電率の誘電体材料が開発されており、導体のない 誘電体共振器に電磁波を閉じ込めた 誘電体共振器フィルタが開発されています。 また特殊なものとしては、超電導体 を使った共振器を使ったフィルタなどもあります。
 
能動回路
 マイクロ波を発生させる素子として、身近にあるものは電子レンジなどに使われている「マグネトロン」 と呼ばれる電子管があります。ただし、通信用などには 別の電子管半導体が使われます。ここでは特に、衛星放送受信機や携帯電話機に使われる半導体回路を中心に述べます。 参考: 高周波用半導体
 
(1) 半導体素子 GaAsFET等価回路  マイクロ波周波数帯で使われる半導体増幅素子としては、 GaAs電界効果型トランジスタが一般的です。 発振器素子としては、位相雑音特性で優れた Siバイポーラトランジスタ も利用されます。
  右図は、寄生リアクタンスを含む基本的なGaAsFETの等価回路等価回路です。 実際のGaAsFETのSパラメータは、このようになります。
 
(2) 増幅器回路  増幅器回路としては、衛星放送受信機などに使われる低雑音増幅器回路と、携帯電話機の送信機段に用いられる、 電力増幅器回路などがあります。
  前者には、特に低雑音特性に優れたHEMT (High Electron Mobility Transistor) 構造のものが用いられます。 具体的な回路については、こちらで更に詳しく述べます。
 
(3) 発振器回路 Siバイポーラトランジスタ等価回路  発振器に使われる半導体素子としては、位相雑音の少ない Siバイポーラトランジスタも利用されます。
  バイポーラトランジスタを使った発振器回路は、電極間の寄生容量を考慮すると、右図のようなコルピッツ型発振器回路が考えられます。
  具体的な回路については、こちらで更に詳しく述べます。
 
(4) μ波集積回路  マイクロ波回路と言えども、その波長より小さいミクロンオーダの回路は、一般の回路と同様に集中定数回路として扱えます。 ただしその寸法は、半導体素子自体程度の寸法になってしまいます。
 しかし、そこまで小さくしなくても、分布定数動作の影響を少なくしたりする回路技術として、ハイブリッド回路技術としての「 マイクロ波集積回路」 技術があります。実際、ミリ波回路も含めよく使われています。  参考サイト  準ミリ波MMIC